女川町誌 続編
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ド号遭難事件にはその後日談として、当時の宮城県知事山本壮一郎氏の温かい人柄を示すエピソードが伝えられる。 ド号の船員たちは長い海上生活の寂しさを紛らすために四頭の犬をペットとして船中で飼っていた。人命の救助に忙殺される救助隊に気付かれることなく、船室に残されたこれらの犬が発見されたのは遭難後一週間以上も過ぎてのことである。このうち三頭はすでに餓死しており、一頭だけが極度の衰弱を示しながらも奇跡的に命を持ちこたえていた。 この犬について、当時の県知事山本壮一郎氏が自ら筆を執って、「県政だより」(五十年六月号)に寄せた一文がある。知事として、これにかかわった積極的な姿勢には一言も言及せず、世論を賞揚したこの文には、同氏の豊かな人間性の一面がにじみ出て、感銘深いので全文を転載する。なお、犬のその後については、残念ながら追跡ができなかった。 16

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