女川町誌 続編
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三 塚浜の道化万才 今はほとんど絶えてしまったが、牡鹿半島各地に行われた郷土芸能の一つに道化万才がある。二百年の歴史を有するといわれるこの道化万才が、本町では戦前まで塚浜に息づいていた。獅子振りのあとで、ご祝儀の多かった有力者の家で演じられたものである。 戦後、多くの伝統的民俗行事と同様、後継者を得られないままに忘れ去られようとしている塚浜道化万才を、命ある限り守り伝えようとつとめている人々がいる。共に塚浜出身の阿部進氏(旭が丘区長)、丹野留吉氏(上四区長)である。両氏は「太夫」丹野氏、「才蔵」阿部氏のコンビで、老人会などの行事に出演し、積極的に啓蒙けいもうと保存の活動を続けている。 以下、両氏が伝える塚浜道化万才の詞ことばを掲げる。括弧内は現代語訳である。 太夫=これ、才蔵や、詰めて・・・おうたか・・・・ナ・(楽屋で待機しているか)、詰 めておうたかナ。 才蔵=おう、詰めておるとも。太夫様のいうことなら取るもの取りあ えず、ベコベコべったり詰めております。 太夫=時に、才蔵を呼んだのは余・の・儀・じゃ・・ない・・が・(ほかでもない)、当 433

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