女川町誌 続編
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事業化の手で継承される方向に進んでいると聞く。喜ぶべきことである。 梶原氏の先例に加えて、昭和六十三年には薬湯に保養を看板に海泉閣(佐藤盛広社長)が高白に開業し、異色の観光施設として注目されている。こうした町内企業家の積極的な姿勢は町の未来に明るい灯をともすものであり、町民も温かい声援を送っている。 自然の景観以外にも自然現象、生物、歴史の分野で、本町が他に誇ることのできるもので、その価値がまだ十分に認識されていないと思われるものがある。次にそれらを列記して本町の観光を考えるための参考に供したい(「文化財」及び「考古遺跡」の項参照)。 ⑴ ウトウとオオミズナギドリ 本町の足島がウミネコとウトウの集団繁殖地として国から天然記念物の指定を受けていることはよく知られている。しかし、観光宣伝の対象としては、ウミネコが主役とされ、ウトウの影はあまりにも薄い。その理由として挙げられるのは、ウミネコには乱舞、餌つけといった見栄えの良さがあるのに、ウトウは日中その姿を目にすることが難しいという点であろう。ところが致命的と考えられるこの欠点を逆手にとって目玉に育て上げた例がある。全国初の、しかも唯一のウトウ飼育に挑戦し、成功した青森県営浅虫水族館がそうである。ウトウと青森県との縁は、悲しい伝説に彩られたウトウ村が青森市の前身であったという郷土史的なものであって、現在県内にウトウの集団繁殖地があるわけではない。ウトウの集団繁殖地としては足島のほかには北海道の天売島が知られるだけである。全国にわずか二か所という希少性はどんなに強調してもしすぎることはないほどの価値があるといってよい。さらに、足島は天売島に比べて観光上の地の利では断然優位にある。そのうえ、繁殖地は国指定範囲外の笠貝島にまで広がり、古代人の横 287

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