女川町誌
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第五節出島の観光現在のところ観光コースには入つていないが、将来牡鹿半島が国立公園に指定の暁は、絶好の観光地として世に宣伝されることであろう。まず女川港を出た遊覧船が港内の漁港施設をガイドガールの説明によつて見聞し、赤い灯台即ち木越礁燈台を左に見て出島へと進む。前方は渺茫たる太平洋、水平線に浮ぶかもめの江の島金華山は、前山にさえぎられて山頂を僅かに見せている。牡鹿半島及び北に延びる三陸沿岸は所謂リアス式海岸で「のこぎり」の刃のように海岸線の出入が多い、白浪に洗われている岩が起立し、その上に大小無数の青松が生え実に佳い眺めである。船は三十分にて出島につく、だらだら坂を登り、海見場(眺望台)に至る、海抜七十五メートルこの島第二の高台である。東は果しなく続く太平洋、南には江島列島が手にとるように浮び、隣して霊島金華山が見える。出島海峡に抱かれた岬・小島・青松の繁みからそびえたつ高架線、湾内に浮ぶ小船、島浜を通う巡航船の残す白波の線、これらの静と動とがおりなす眺望は箱根といつた絶景である。北は大須灯台が白々と浮き立ち白浪岩を嚙むあたり、眺望者をして右顧左眄去りがたきを感じさせるであろう。丘の上の島道を西に進み学校前を通り寺間に行く途中の眺め、純白と赤の配合鮮やかな近代的な四子の崎灯台を前景にして、金華山と江の島を背景とした感じは、海見場とは又違つた雄大な眺めである。寺間部落を通り坂道を登つて四子ノ崎灯台を訪れ、霧笛信号や舟の道案内の話を聞くのも一興であろう。寺間より遊覧船に乗り奇岩絶壁の眺めを満喫しながらの島巡りは、十和田湖のそれに比べられる景観である。女川雄勝間の道路が完成され、バスの運行が開始されると、尚一層観光地としての重要性が認識されると共に、この観光道路が延長され、出島海峡を釣橋によつて渡ることも決して遠い将来の夢ではない。この節出島小学校長阿部盛亮氏執筆878

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