女川町誌
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〇・六%にのぼる。即ち江島の「サッパ」の約三分の一は女川の慣行漁法である「サッパ」労働様式に膠着し専ら零細な経営を自営する漁夫群である。この中から小数の「サッパ漁家」が(全数の四・五%)五トンの動力船を使駆して、やゝ近海漁業に近い労働様式に入つている自家経営漁家である。この小数の漁家は主として家族労働力によつて運営され、家族労働力が欠乏する場合には、肉親的関係の労働力がこれに参加する。C群の第三の労働様式は第一・第二と同じく一年中磯釣、いわゆる「サッパ漁業」を行うものであるが、この第三の「サッパ」は自分の漁船すら持ち得ないで、他人の船に乗込んで磯釣をやる労働群である。これは全数の四・五%である。このC群に属するもの、即ち女川の伝統的な「サッパ漁業」に従事するものは、全数の三九・六%である。即ち漁業近代化の波がひしひしと覆いかゝつている状態下において、尚かつ三九・六%の伝統的漁法によつて、零細な漁法を営んでいる漁夫群が存在し、更に部分的に網修理という副次的労働に冬期間のみ雇傭され、あとの大部分の期間を慣行漁業に従事する四六・四%を加えると、江島の「サッパ漁家」の八六%が近代化されない零細経営漁夫であることを意味している。僅かに一四%だけが二〇トン級の動力船に乗つて、冬期間だけサメ網に従事する。このサメ網は鰹・サンマとは別の資本経営であるから、労働者は二人の経営者に雇傭され甲の漁船から乙の漁船に乗うつらねばならない。小数であるがサメ網漁業には共同という形で乗組んでいる漁夫がいる家内工業的性格の漁業によつて、僅かに「サッパ」の近代化を意図している漁夫群であると思われる。⑶近海漁業労働者の労働様式前項⑵に述べたような、零細経営漁家の「サッパ漁夫群から、次第に近代的な資本経営の漁業労働者が発育を遂げてくる。後出の表は労働様式を示すものである。849

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