女川町誌
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労働様式をもつ資本経営内部に進入した「サッパ漁家」の男子労働力には尚依然として「サッパ漁業」がつきまとつている。近代労働がこれに極く僅かの期間、例えば一―三か月、ある漁夫には共同労働という形で、またある漁夫には純然たる雇傭労働の形式で附加される。即ち部分的雇傭であり、短期間「サッパ」を捨てゝ雇傭労働につくという労働様式である。これは前出の表にはAという欄に該当する。A欄をみると十二―三月まではサメ網の共同乗であり、他の四―十一月は無動力小漁船による磯釣、即ち自営「サッパ漁業」の期間である。A欄の第二の型は、一と大体同じであるが、磯釣の期間が短縮されて、そこに水産加工への雇傭労働が見られているだけの相異である。「サッパ漁家」の男子労働力の労働様式を代表するものはB欄である。こゝではAよりも一層に近代的労働への参加が減局されて、本来の「サッパ」様式が濃厚になる。B様式には二つの型があるが、その第一のものは本来の「サッパ」に極く短期間のサメ網修理という雇傭労力が加つている。これはサメ網に乗りはぐれ、いわば冬期漁業の失業群であることを意味し、網の修繕作業を専行しているものである。この群に属するものは、二〇トン級のサメ網漁船さえあればこれに召集されて近海に出る漁夫群である。Bの一と二との相異は、その漁獲に相異がみられるもので、第一の方は鰹一本釣が加つて、やゝ近海漁業的色彩をもつ「サッパ」であるし、第二の方はワカメ・コブ・アワビ・タコの沿岸漁業にこびりついている「サッパ」である。即ちこのB群の「サッパ」は、資本経営への労働に片足をかけ、待機している「サッパ漁夫群」であることを意味する。これが全数の四六・四%即ち約半数いるのである。C群は、専ら「サッパ」にふみ止つている男子労働力である。これには三つの労働様式がみられる。最も多いものは無動力一トンの漁船にのつて年中沿岸漁業を営むもので、三848

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