女川町誌
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㈠地先漁業は磯つきもの・蛸・すゞき等で、殆ど全戸がこれに参加し、漁獲物は主とし漁協を通じて共販される。漁業の近代化するにつれて、これが鰹船乗組や地先漁業の一変種として鮫網経営が発生してくる。㈡鮫網は八つの組を成し、各組一四戸編成各戸は平等に網を提供し労力また平等に一名とし、二〇屯程の動力船を借り、一二月―二月にわたり共同経営され、計一一二戸が参加する。いわば江島漁家の基幹産業で、その分配も平等である。極めて強い共同性であることを指摘し得る。㈢鰹船乗組はかつて島にいた人で、今は女川港に住む経営者に集中している。年令的には青壮年層が中心となつている。これが島の封鎖性を破る傾向をもつか、漁協総代以上の役員になつているものが不足故たいした事はない。㈣地先漁業や鮫網と密接に関係しているのは漁業協同組合である。これは二八九名の組合員をもち、平均一戸二名になつている。運営は総代会によつて行われる。即ち地先漁獲物の共販、鮫網組の小型動力船組合の資金貸付、医療施設や連絡船の経営を主な事業としている。㈤自治組織として契約講があるが歴史は古く、文化三年の記録によれば島の全生活を組織していたのであるが、現在でもかの井戸で全戸を両分し、両区を六組に分けて各々長をおき全体は島長(当頭)が統括している。そして一応目標として漁業を含めた全生活面にわたり、共同団結による相互援助をうたつているが、具体的には共同道路工事、共同供養、市日即ち共同購入祭等を管理しているにすぎない。㈥女川町に去つた船主が女川町政に強い発言力をもつ、また島内の役職にある者と密接な血縁をもつて結ばれていることにより、江島の政治は、これらの役職を通じて実質的な権力に依存し、また江島は是等の権力者の政治的地盤となつている。女川の船主は雇傭関係によつても直接江島に滲透しており、島内全体があげて権力に奉仕する方向に整序されているのである。(この項は主として東北大学斎藤吉雄・鈴木博・加藤恒子三氏の論文による)三、江島漁業労働者の状態ここで江島に於ける漁業労働者が、如何なる労働様式で如何に働いているかを述べて見よう。彼等は大体に於て近代資本主義経営による漁業に参加している。しかし果して満足すべき状態にあるか、特に雇傭状態は年間を通て満足すべき状態にあるかを検討することは、江島部落の漁業発展の将来にとつて、また女川全体の漁家の福祉の増進の為め肝要なことである。そしてその大部分が零細漁家であるという漁業状態から見て、その福祉の向上を考えることは841

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