女川町誌
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まつた。このような惨憺たる歴史の後を受けて女川には昭和二十七年現在就業している漁船の数は総計七四七隻にのぼつているが、その内六二八隻は無動力の一トン未満の小型漁船で、一一九隻が、一トン以上一二〇トンに及ぶ小型・中型・大型の動力漁船である。ことに一トン未満の無動力船は、戦後毎年約一〇〇隻つゝ新造されている。この小型無動力船を女川では「サッパ」といつている。この「サッパ」こそ女川の漁業の中核をなす漁船である。この「サッパ」に次で数的に多いのは五トン未満の動力船である。約七十五隻に達している。終戦後毎年約十隻つゝふえて来ている。この「サッパ」は主として地元沿岸漁業に従事し、五トン以下の動力船は主として金華山沖を中心とする近海の小女子漁、鰹・サンマ漁延繩業に従事する漁船である。五―一〇トン、一〇―二〇トンの動力船はむしろ減少の傾向を示している。これは多分女川の漁場の条件から見て、この船形は有利でなく中途半端であるという理由にもとづくものであろう。これに反して二〇―五〇トン以上のやゝ大型の漁船が最近少しづゝ増加の傾向を見せている。この状勢から判断すると女川の漁船は漸次大型化しているという結論をつけてよいであろう。三十三年頃になると二〇〇―三〇〇屯の船も建造されて遠洋漁業に進出するようになつた。即ち生産手段を表徴するものとしての漁船の型からいうと、小型無動力の一トン未満の漁船が支配的に多数を占めているという事実、並に動力船においては五トン級の漁船が漸次増加し、五トンから二〇トンの中型は減少し、これに反して大型動力漁船が次第に増加しているという事実は、女川の漁業の今日の状勢を物語るものであるといえるだろう。即ちこのような漁船の型の変化の動向の下においては、非常に恵まれた漁場条件の下において、女川の漁民の354

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