女川町誌
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遺憾とする所に有之候。当港の修築は現下国際情勢に鑑み寸時も遷延を許ささる緊要なる施設と認められ候に付、国庫補助を以て修築の件昭和十六年度予算に編入せられむことを玆に謹て陳情候也。昭和十五年七月理由女川港は天然の良港として、夙に人口に膾炙する所にして湾内常に静穏にして水深に富み、又能く大船巨舶の出入碇泊に適し稀に見る天与の良港なり。而して湾外一帯は所謂世界三大漁場の一と称せらるゝ世界有数の海田にして、更に太平洋を隔てて米国桑港に直面し、米国航路を短縮すへき緊要の位置に在り産業の開発貿易の進展上将又軍事上其の利用の範囲極めて広大なるものあり、然るに従来陸輸機関備はらさりし為、多年の間空しく委乗せられ其の利用を欠きたるは国策遂行上甚た遺憾とする所なりしなり。政府に於て此処に見る所あり女川鉄道を敷設せられ客年十月之か開通を見るに至り玆に久しく閑却せられたる天与の富源正に開拓の緒に著きたるなり。斯くて当港は海陸両面に内外の物資を呑吐すへき、便を備ふるに至り当港利用の価値著しく増進するに至りたるを以て、将来地方産業の開発に東北振興に延ひては国運の伸展に寄与する所蓋し甚た大なるものあるへしと信せらるるなり。然るに当港現在の状勢は海陸連絡上利用すへき海岸地帯狭隘にして鉄道の臨港敷設不能なるのみならす、船舶の荷揚場に充つへき大なる地域を存せす、随て接岸荷役も亦不可能なる状態なるを以て、此等の設備即ち臨港線の敷設護岸の改築荷上場の増設接岸岸壁等を築造し、之か完備を期するに非されは当港天恵の機能を十分に発揮し其の利用を専らにするを得さるのみならす、太平洋と日本海を連結する重要なる女川鉄道の大使命を完うするを得さるへく、地方開発は勿論東北振興上又国家経済上、将又軍事施設上洵に遺憾とする所なりとす。如上の諸点よりして当港の修築は現下の国際情勢に鑑み、必然の急務なるを痛感せらるるなり。希くは当港修築費国庫補助の件昭和十六年度予算に編入せられむことを敢て要望する所以なりとす。昭和十五年県議会長の政府に対する陳情書宮城県女川港を昭和十六年度に於て国庫補助を以て速に修築相成度此段及陳情候。221

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