女川町誌
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四、野蒜は貨物の揚卸に端艇を要し、又風を支くるの山岳を有せざる為風浪の期節に於て端艇の使用困難なり、然るに女川は大船巨舶を直に岸壁に繫留し得べし之れ女川の野蒜に優る第四なり。五、横浜港を発したる船舶は凡そ二十六時間にして野蒜に着すべく、而して荷役に要する時間実に十二時間に及び、随て発着時間計三十八時間を要するも、女川は横浜を距ること野蒜と粗ぼ同一にして荷役時間僅か四時間にして終了するを得べく、発着時間に於て野蒜に比し八時間を減縮するの利益あり、之れ女川の野蒜に優る第五なり。政府に於ては女川湾築港工事に着手せられるに於ては、宮城県は該工事費予算七拾八万余円に対し、弐拾五万円を地方税より支弁すべきに付速に起工せられんこと建議す。明治十九年一月宮城県会議長遠藤温内務大臣伯爵山県有朋殿⑶内務大臣閣議に提出内務大臣は地方の要望と国家的見地より、女川湾築港案を左の様な趣旨を以て閣議に提出した。別紙女川湾築港著手の件提出す明治十九年一月内務大臣内閣総理大臣殿提出案女川港の件、嚮に意見を具し太政官へ上陳し、尋て築港計劃豫算等進呈の末上申の趣聞届す、尤も事業著手の儀は目今財政上の都合有之に付、追て何分の詮議に及ふへくとの裁令を受く、当時宮城県令松平正直よりも該事業に関し当省に開申する所あるに依り、右裁定の趣旨を以て指示に及ひ置きたるに、猶又今般該県令は県会議長の建議に副書し、別紙の通り再申せり、考ふるに該工事著手の遅速は東北地方物貨流通上に於て一大関係を有し、人民の之を待つ一日千秋不啻速成希望の餘遂に巨費を擲ち其の起工を促さんとするに至れり、若し此の時機を失ふときは徒に其の奮進の気鋒を挫折し、従て国家の不利を来すへし、况んや野蒜の事業半途に属し物議恟々たるの時なるに165

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