女川町誌 続編
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☆チリ地震と地球科学 古来、庶民にとって恐ろしいものの筆頭に挙げられてきた地震であるが、地球科学、特に地球の内部構造に関する知見の多くは、この恐ろしい地震の研究から得られたという。 地殻とマントルとの境界面とされるモホロビチッチ不連続面(略称、モホ面)は、地震波がこれを境にして急に速くなる現象から発見されたもので、この現象の発見者であるユーゴスラビアの地震学者の名を取って呼ばれている。モホ面は大陸地域で約三〇㌖、海洋底で約五㌖の深さであることが測定された。さらに研究が進むと、モホ面直下で毎秒約八㌖の縦波(P波)は、深さとともにスピードを増すが、地下二九〇〇㌖付近で急に減速し、再び前の速さにもどる。また、地震波のもうひとつの波で、液体の中は伝わらない性質の横波(S波)は二九〇〇㌖以上の深さになると観測されなくなる。こうした観測結果に基づいて、マントルの内側には液体の部分の存在することがわかり、核と呼ぶことになった。核の中心部は固体だろうと考えられている。 チリ地震もまた、大きな新事実の発見を生んだ。地震の衝撃で地球がまるで釣り鐘のように自由振動を起こすことが初めて確かめられたのもこの地震の観測結果からなのである。釣り鐘といえば、われわれ女川人は、尾浦御殿を舞台に繰り広げられたロマンスを思い浮かべるが、釣り鐘のように振動する地球の無音の声はわれわれに何を語りかけようとしているのだろうか。 ☆地震があったら津波の用心 昭和八年の三陸大津波のあとで、三陸海岸の各地には、「大地震の後には津波が来る」「地震があったら津波の用心」と大きく彫った碑が建てられた。両方の文を並べたものと、どちらか一方だけのものとがある。 46

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