女川町誌 続編
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なり含まれており、その事業所はほとんどが水産関連の業種に入る。そのうえ、統計の分類基準に時々変更が見られ、一貫性を欠くので、史的変遷を跡づけるための資料としては使用上難点がある。一方、事務所(商店)数では逆に小売業が八〇㌫を超し、本町の商業活動を語るためには小売業に視点を置く方がより実情に即していると考えられる。なお、卸売業については水産の記述によってその大概は理解されるはずである。 本町の小売業には、漁港という性格から、入港漁船の船員の購買力に支えられている面もあるが、地元購買力の石巻市への流出傾向と人口減少が進行する中で、業者はもちろん町民の間にも、将来に対する不安の声が高まっている。反面、原子力発電所の一号機建設の着工から完成までの数年間は小売商品の販売額にはかなりの伸びが見られ、現在建設中の二号機にも同様の期待が寄せられている。とはいえ、原発工事関係の需要は飲食料品の割合が大きく、建設終了に伴う落ち込みは必至のことと覚悟しなければならない。一時の小康に安んじることなく、幾分なりとも心に余裕の持てる今こそ、じっくり討論を重ねて商業活性化の大計を練り上げる絶好期といえよう。 財団法人日本立地センターが昭和六十年にまとめた「女川町地域振興計画作成調査報告書」は、本町小売業界の抱える問題点として、①経営に対する危機意識の薄さ、②経営者としての研究心や積極的な姿勢の不足などを挙げて、厳しい反省を迫っている。さらに、商業振興の方向としては「単に既存商店街の活性化を推進するだけでは不十分である」としたうえで、最終的には「海上レジャー&ショッピング・センター」といった核店舗の建設によって、地元住民の購買力の引き止めにとどまらず、観光客、外来客の購買意欲を誘う、積極的なマーケッティング戦略を展開すべきであると提言している。 目を個々の業者に向ければ、NHKによって全国的に紹介されたマルユー・ベーカリー(阿部雄悦社長)のイワシ 259

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